春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第9章 その時が来るまで
「 色んな噂が広まってて、何が真相か分からなくなってるよねぇ……」
「全部合ってるよ」
もうすぐ3限が終わる。
話を遮って芝生から立ち上がると、3人は同じ顔をして俺を見上げた。
「あ、合って……る!?」
「俺、今あの人にすげー夢中なの。
こんな気持ちハジメテ」
「~~~!?
め、めっちゃ年上なんだけど!」
「関係ないよ」
「つーか蓮見さん助手だよ!? ダメじゃん!」
ダメじゃありません。
そりゃ、俺も彼女の立場とか秩序とか守りたいって思ってるけど
春ちゃんは今月で大学を去るし、何の問題も無いんだな。
ブラックスキニーにも付いていた残りの芝を払って、歩き出そうとすると
「……ユキィ
みんなのユキくん、でしょ……?」
俺のパーカーの裾を引っ張って、目を潤ませる女。
……昨日も誰かに泣かれたなって、思い返しながら
掴まれた手をそっと外して、震えている頭を撫でて
すぐに離した。
「この度、“ みんなのユキくん ” は
春ちゃん専用になりました」
「………!!」
「噂、拡散しておいて。
彼女にベタ惚れで、誰にも渡す気が無いらしいって」