春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第9章 その時が来るまで
中央広場を抜けて、外階段を駆け上がる。
空デの館内に入り、顔馴染みの奴らとの挨拶もそこそこに
廊下の突きあたりを曲がって、教授や助手達がいる角部屋に辿り着いた。
“ 空デの研究室もよく覗いてるんでしょ? ”
まさにその通りだな。
もうハタチになったっていうのに、今の俺ときたら
大好きな先生を遠くから眺める、ピュアな男子校生みてぇ。
でも、マジで気持ちはそんな感じ。
「……って、いないし」
中休みなはずなんだけど。
メシでも食いに行ってんのかな。
オープンになっている扉の端から、中の様子を探ってみたものの
春ちゃんの姿が見えないので、さっさと立ち去ろうとすると
「あ! 早乙女くん!」
俺の姿を見つけた1人が、研究室の中から声を張り上げた。
確か……春ちゃんが “ 姉さん ” って呼んでいる、助手の竹中さんだ。