春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第10章 目撃
……でも、やっぱり違うかも。
遼くんと私がいる企画部と、沙月がいる店舗開発部は私服出勤だから
芹澤さんの格好もよく覚えてるけど、あんなダボッとした感じじゃなかったし。
「仮に今のが芹澤だとして、なんでこんな所にいる?」
窓を半分開けて、宮本さんはポケットから煙草を取り出した。
「ここは家具メインの製造業だろ。
店舗設計してた奴には関係ねぇはずだ」
「……ですよ、ね」
「つーか、あいつ結局今何してるんだっけ」
……遼くんと、同じ反応。
興味すら無いとでもいうように、宮本さんはライターをカチッと鳴らして火を付けた。
やっぱり見間違いだよね。
って、これ以上宮本さんを付き合わせてしまうのはよくない!
「宮本さん、私行ってきます」
「あぁ、頑張れよ」
「はいっ!」
助手席のドアを閉めて、ペコッと頭を下げると
駅の方向を見つめる宮本さんの車を後にした。