春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第10章 目撃
さっき、宮本さんが言った通り
○○木工というのは、壁面収納から椅子・ソファーなどのファニチャー製品を手掛ける、老舗の家具メーカーだ。
特注家具の製造にも力を入れていて、うちの会社が創立したころから取引している。
立派な生産工場が、関西方面にあるんだけど
ここ都内の事務所にて、試作品や色サンプルの確認などを行っているんだ。
「はい、蓮見ちゃん。
加賀谷くんに頼まれてたやつ、これだよね」
4畳半ほどの小さな応接室。
淹れてくれた緑茶を飲んでいると、作業着を着た担当者が戻ってきた。
年齢は私のお父さんと同じくらいで、名前は山田さん。
手にタイルの色見本を持っている。
「光沢のあるやつが5色に、マットなのが3色」
「はい! 確かに!」
「もう、これが限界だから。
蓮見ちゃんからあのスパルタに言っておいてよ」
「うふふ♡ 承知しました♪」
遼くん、期限ぎりぎりまでOK出さないもんなぁ。
汗を拭きながら苦笑いする山田さんと一緒に、私も微笑んだ。