春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第11章 どうしようもなく、惹かれる心
唯一自由の利く右足で
芹澤さんの脚の間を思いっきり蹴りあげた。
「~~~ぐっ……!!」
……今だ!!
内股になって痛がる彼から腕を外して、路地の入口へ向かって走り出す。
とりあえず○○木工の事務所に戻ろう!
山田さんにも事情を全部話して、制作を止めてもらうようにお願いしよう。
“ シンプルだけど、機能的で実によく出来てるんだよ ”
「………っ」
そりゃ、そうだよ。
遼くんのデザインだもの。
……仕上げに入っていて、販促や宣伝が進んでる商品を取り止めることなんてほぼ100%無い。
だけど
それでも……っ
「……おい! 待て!!」
「~~キャッ……!」
あと1歩というところで、後ろから凄い力で引き戻されて
よろけた体が、そのまま地面へと倒れていく。
「……痛……っ」
尻もちをついた私の肩を掴んで
芹澤さんは水路の上のコンクリートに、そのまま私を押し倒した。