春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第11章 どうしようもなく、惹かれる心
「いいんだ、春菜」
「……えっ?」
いつもの遼くんの声のトーンに戻ったので、パッと顔を上げる。
「あのソファは、既に新作として一部の媒体に発信されてるらしい」
「………!」
「あちこちで量産もかけてるし。
対会社でどんな話をするかにもよるけど、多分止まらねぇよ」
そ、んな………
遼くんがそう言うのなら……もう手立てが無い。
頭の片隅で分かってはいたけど、酷過ぎるよ……
「とは言っても、俺は全てのデザイン画に自分のサインを紛れ込ませてるし
データは自宅のPCにも保存してあるからな」
「………!」
「世に出たとしても、それは俺が生んだものだって証拠はいくらでも揃ってる。
ったく、芹澤も本当にバカというかアホというか……」
私から手を離して、遼くんは大きく溜息を漏らした。
……短い黒髪が、太陽の光で艶めいて
鋭い瞳が色濃く揺れている。