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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第12章 春の嵐


……ユキがテーブルの上に置いたのは


3日前の日曜日、デートした水族館の


お土産ショップに並んでいた、球形のスノードームだった。



「こんなの、小学生の時にしか見た記憶が無いけど。
まだちゃんと売ってるんだね」

「………っ」

「ほら、こうするとペンギンも一緒に泳ぐんだよ」



片手で掴める程の、小さな容器をユキが逆さにすると


透明な液体の中で、ミニチュアのペンギン達が揺れて


キラキラと、小さな雪の結晶が舞い上がった。




……ドキドキが、苦しさへと変わっていく。




光輝くそのガラスを、下から覗きこむユキの瞳が


すごく……すごく綺麗で


きっとそれは


ユキの心が綺麗だから


優しくて、美しいから。




……そんな彼が


真っ直ぐ、私を好きだと言ってくれるのに………



「……!」



ユキが顔をこっちに向ける。


その目が大きく、見開かれて


……だけど、その表情が滲んでよく見えない。


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