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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第12章 春の嵐


「……春ちゃん……?」



驚いて、心配そうに触れる瞳。



……ごめんね、ユキ。


私は結局


あの時から、時計の針を止めたまま


なにひとつとして、進んでいない。




「……ユキ……ごめんなさい……」


「………!」


「私、だめなの。

りょ、遼くんでいっぱいで……」


「…………」


「……っ ふ……

遼くんのことばっかり、考えちゃうの……」






………遼くんは


大学時代、講義に出たことなんて一度も無いって、自分でも言っていたように


デザイン室に引きこもって出てこなかったり、かと思えば外国に行ったまま数ヶ月帰ってこなかったり。


そんな自由奔放でも単位をもらえたのは、才能と実力があるからこそ。


歳の差が2つの私と遼くんは、2年間同じキャンパス内で過ごした訳だけど


その姿を見ることはほとんど無かったと言っても過言ではない。


……それでも


展示会で衝撃を受けた私は、ストーカー並みに遼くんの後ろを付いて回って


初めて会話が出来た時、 “ 変な奴 ” って代名詞をつけられたけど


変な奴から、面白い奴に変わって……


1年かけて、やっと春菜って呼んでくれるようになった。

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