春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第13章 2人の秘密
* * *
……ふらふらとした足取りで
ユキの後ろを、なんとかついて歩いていく。
霊園の入口の、少し手前
桜並木が続く、通りの端に並んだベンチの前にくると
此処で待っててって言われて、私は1人腰を下ろした。
「…………」
震えは止まったけど、まだ胸が苦しい。
風が弱まって、穏やかな気候になった午後の2時。
目の前の遊歩道には、休日の散歩をする人達で賑わっている。
「……さくら……」
ぽつりと、呟いてみて
遼くんの奥さんの名前を、今初めて知ったことに気付いた。
……学生の時から、プライベートが謎めいていた遼くんは
社会人になっても、自らを語ることなんてほぼ無いし
奥さんを人前に連れてくることだって、一度も無かった。
私自身、極力その話題から避けるようにしてたから
遼くんと奥さんが、いつどこで出会って
どんな暮らし方をして、どんな夫婦なのかなんて……
「………っ」
……ただの、後輩。
私、遼くんのこと、なんにも知らないんだな……