春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第15章 少しだけ
念のため、空間デザイン科の教室を見て回って
施錠を確かめて校舎を出る頃には、夕陽が沈みかけていた。
「……よし、帰ろう」
両側に芝生の丘が続く、中央の並木道には
色とりどりの花が植えられた、花壇が続いている。
校門に向かって歩きだすと
「………?」
銀杏の木の奥側から、1人の影が伸びている。
私の位置からは、花壇の淵に座っているその両足だけしか見えなくて
「………!」
足を進めて、その姿が見えてくると
瞬く間に、ドクッと心臓が跳ねた。
反対側を向いて、芝生の広場を眺めている横顔。
……彼は……
「……遼、くん……?」
私が、そう呼び掛けると
遼くんはゆっくりと振り返った。