春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第15章 少しだけ
「 “ 助手の蓮見先生 ” 」
「………!」
「ちゃんとやってるか?」
花壇の淵に座って、足を組み直して
伊達メガネを外しながら、遼くんはふっと笑った。
重ね着した黒と紺のTシャツに、色落ちデニム。
お洒落していた土曜日の格好とは違う……会社で見る、いつもの遼くんだ。
「ど、どうしてここに……」
戸惑いながらバッグを肩にかけ直して、遼くんの前へ近付いていく。
「サボってんじゃねぇかと思って。
お前がしっかり働いてるか見に来たんだよ」
「……! は、働いてるよ!」
「ふーん。その割には帰るの早ぇな」
「今日学生達は休みだもん!」
……そう、今日は祝日だ。
当然、会社もお休み。
だからこそ、遼くんがここに居るのが不思議でならない。
「分かってるって。
そんなムキになんなよ」
騒がしい奴、と付けくわえて遼くんが笑った。