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春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第15章 少しだけ


……月曜日も、火曜日も


会社で一緒に居るのが辛くて、なんとなく遼くんを避けてしまっていたから


こうして2人で会話をするのは、霊園で会った土曜日以来だ。


……胸がドクドク鳴って、すごく緊張する。


私は無言のまま、遼くんの隣りに座った。



「……すげー久しぶりに来たけど
全然変わってねぇのな」



私が出てきた空間デザイン科の校舎を見つめて、遼くんが静かに呟いた。



「つっても、何か思い出があるかって聞かれたらすぐに出てこねぇけど」

「……そりゃ、そうだよ。
遼くん、ほとんど大学に行かない問題児だったじゃない」

「そうか?
ちゃんと課題は提出してたぜ?」

「そう、だから先生達みんな嘆いてた。
1日前までは形になってなかったのに、当日にいきなり完璧に出来上がってるから」

「魔法使いなんだよ、俺」



……よく、言うよ。


遼くんは楽しそうに笑うけど、こっちは溜息混じりの苦笑に近い。


でも、本当に魔法かもしれないって、学生時代は本気で思ってた。


突然泉のように湧きあがる遼くんのアイデアは、その度に私の心を奪っていったんだ。

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