春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第15章 少しだけ
「 “ 春ちゃん ” と、 “ ユキ ” か」
「………!」
そう呟いた遼くんが、ふっと笑みを浮かべる。
「いいな、春雪。
真っ直ぐで優しい、お前達にぴったりな響きだ」
「………っ」
「墓の前で一緒にいる春菜と雪斗
……似合ってた。
2人を見た時、瞬時にそう感じたよ」
……胸がいっぱいで、言葉にできない。
遼くんの顔が、いつもより優しくて
……それでいて、どこか寂しそうで
笑顔なのに、苦しい程の切なさが伝わってくる。
「あいつといると、腹が捩れるだろ?」
「……えっ?」
その言葉を聞いて、パッと顔を上げると
煙草を咥えながら、遼くんは楽しそうに笑う。
「あんなイケてる面して、芸人並みに面白ぇから。
雪斗がいると、重い空気が一瞬で吹きとんじまう」
「………!」
「……数々の場面で、どうしたって暗くなるからな。
桜に関わっていた人間達にとって、あいつは太陽みてぇな存在なんだ」