春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第15章 少しだけ
遼くんの瞳が、夕陽によってキラキラと揺れている。
なんだか、その表情が泣いているように見えてしまって
……そんなわけ、無いのに
私は思わず、そっと遼くんの右腕に手を添えた。
「……遼くん……」
「…………」
掠れる声で、彼の名を呼ぶと
遼くんは、一瞬横目で私を見て……でもすぐに逸らして
煙草を携帯灰皿の中で潰した。
「良かったな、春菜」
「………!」
……えっ……?
「あいつモテ過ぎて大変だろうけど、心配しなくていい」
「……遼くん……?」
「いい加減な事は絶対にしない奴だから。
ちゃんと、春菜だけを見てるはずだ」
「………っ」
「俺が保障する」
夕陽を見つめたまま、私を見ない遼くん。
……ドクドクと、心臓の鼓動が波打って
引き締まったその右腕を、さらに強く掴んでしまう。
「……遼くん」
……違うの。
待って。
私、本当は……