春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第16章 サヨナラ、春ちゃん
「……俺に逢うとき
春ちゃんはいつも目が真っ赤だね」
ふいにユキが呟いて、ハッとして顔を上げると
ユキは真っ青な空を見上げた。
「……姉貴が死んでから、数年は
俺も隠れてよく泣いてたな」
「………!!」
「高校の時にも、ここみたいに屋上があってさ。
親とか友達がいない時だけ、うまく涙腺が壊れるようになってたんだよね」
……ドクンと、心臓が跳ねる。
ユキは柔らかい表情で、目を細めているけど
ユキの苦しみや痛みが、胸に突き刺さってくるようだった。
だけど、ユキが初めて
自分の過去や、真実の想いを言葉にしてくれている気がして
「……ユキ、続けて……?」
震える声で、そう告げると
ユキは私を見て、ふっと笑って
再び視線を空へ向けた。
「……身近な人が旅立つとね
心に穴が開くんだ」
「………!」
「よく、時間が解決するって言うじゃん。
でも、それって本人の意思に反していて
残酷な程、“ 解決 ” に向けて時(とき)が流れてしまうんだよ」