テキストサイズ

春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第5章 誘ったのは、私です

彼が説明した状況に、なにひとつとして異論を言えないけど


敢えて付け加えるなら、なぜこんな状況になったのかは自分でも分からない。


分からないけど、意識がしっかりしているのも確かだ。


………日付が変わって、4月1日の深夜0時。


2時間前に出逢った、初対面の彼が


私の部屋の、私のベッドの上に、上半身裸で座っている。



………いや、ひとつだけ訂正。


衝撃の方が勝って、さっきは瞬時に思い出すことができなかったけど


彼と私は、残念ながら全くの他人とはいえない。




『……早乙女、くん……』

『…………!』




阻止したままの手に、ぎゅっと力を込めて


彼の名前を呼ぶと、彼は瞬きをして私を見つめた。




『あれ、俺のこと知ってたの?』

『……名前だけ』

『へぇ、偉いね。
“ 空デ ” だけで何百人って学生がいるのに、覚えてるんだ』

ストーリーメニュー

TOPTOPへ