テキストサイズ

春雪 ~キミと出逢った季節 ~

第2章 桜の木の下で

「……これだから、ガキは嫌なのよ」



自分も5年前までは、あの場所で散々騒いでいたくせに


時間に追われる立場になり、社会の厳しさを知った今


お気楽だったあの頃が懐かしくて、羨ましくて


空しい独り言を呟きながら、首を後ろに倒して夜空を仰いだ。




“ アラサー女が、現実から逃避してんじゃないっつーの ”


“ 私はまだ大丈夫なんて余裕があるなら、今すぐその考えを改めなさい ”




「…………」




1時間前に言い放たれた、同い年の友人達の言葉。


夜桜から落ちる花びらを見つめながら、心の中で自分に問いかけてみる。



………逃避してるわけじゃない。


まだ大丈夫だなんて、思ってもいない。




………そうじゃないの。




余裕を感じるとかではなく


私には、その “ 必要 ” が無いんだもの。




「……8年め、突入か……」




あの頃と、同じ想いを抱えたまま



あの時と、同じこの場所で



今年も、こうして桜を見上げる季節が訪れた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ