春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第6章 先輩と後輩
「いいなぁ、加賀谷さん。
ラブラブ夫婦♡」
まるで水中にいる時のように、沙月の声がくぐもって聞こえる。
「ご結婚されて何年でしたっけ?」
「忘れた。
そんなのいちいち数えてねぇよ」
「あら、愛妻家なのに?
でも男の人って皆そう言いますよね」
………嘘つき。
入社歴と同じだから、今年で7年目って分かってるでしょ。
それに
結婚記念日の、3月31日には
誰よりも早く、真っ直ぐ家に帰っていくじゃない。
「俺ビール……って春菜。
お前それ何杯目?」
「…………」
「おい、無視するな……」
「宮本さんはビールを飲み続けるので
春菜と私で、ボトル2本空けちゃいました♪」
答えない私の代わりに、沙月が明るく話してくれる。
「ったく。
俺が来るまで、飛ばすなって言っただろーが」
「……ぜんぜん、大丈夫だもん」
「アホ。
顔見りゃ分かるんだよ」
ぼそりと呟いた私を見て、溜息をついた遼くんは
ビールと一緒に、お水をひとつ持ってきてと店員さんに伝えた。