言葉で聞かせて
第1章 姉から突然の呼び出し
『いらっしゃいませ。ようこそ、ホストクラブ「ange(アンジュ)」へ』
店のキャスト全員の声が揃ってフロアに響いた
開店時間だ
俺はその中で声を揃えた1人
古田敦史(フルタアツシ)
源氏名は流星
開店と同時に店に入ってきた着飾った女たちがそれぞれのお気に入りの腕を取って店の奥へ入っていく
「流星ぇ〜!行こ?」
豊満な胸の上半分を曝け出したような露出度の高い服で1人の女が俺の腕に抱きついた
その身体の魅力を惜しげも無く使い俺を誘惑してくるそいつには連れがいる
もう一人の方は俺とは別の男と腕を組んでいた
ホストというより王子様
明るすぎない茶髪に緩くパーマをかけて、微笑みを絶やさないそいつは俺の実の兄貴である古田悠史(フルタ ユウシ)
兄貴とはいっても双子だから同い年
芸能人顔負けの甘いマスクで溶けそうなほどの心地よい優しさとくれば女達は皆虜になってしまう
反対に俺は敦史よりはキツイ印象の顔で、長めの金髪をワックスで立たせている
性格も反対でどちらかと言わずともS、俺様
主導権を握って引っ張って欲しい、なんて女は悠史じゃなくて俺の虜
俺と悠史はこの店で人気を二分するホストだ