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言葉で聞かせて

第11章 記憶


僕はまた赤い顔で見入っていた千秋さんに向き直る


「千秋さん?このように僕たちが体を重ねることは貴方と付き合ってる間、一切ありませんでしたからね?」
「あたりめぇだ。気持ち悪い」
「気持ち悪いは失礼でしょ」


「こら」と頭を叩くと敦史は「気持ち悪いもんは気持ち悪いんだよ」と嫌そうな顔を僕に見せた

千秋さんはそのやりとりを見てくすくす笑っている


『でも、お二人ともすごいイケメンで、仲良しなんて女性たちから誤解されてしまいそうですね』
「あーー……まぁ、仕事仲間には誤解して茶化してくるやつもいるよな」
「うん。まぁわからなくもないよね。二人とも良い年だし、一人暮らし出来ないほど生活能力がないわけでもなく、収入もあるとなればね」


こう理由を挙げてみれば本当に僕たちは世間一般から外れている


『どうして二人で暮らしているんですか?』
「……」
「ごめんなさい千秋さん。それにはお話し出来ない理由があるんです」


僕の返答に「聞いてはいけないプライベートなこと」であると察した千秋さんが細く小さい字で「ごめんなさい」と謝罪した


「謝るようなことじゃねぇよ」
「えぇ。それに、お付き合いしてる間にいつかはお話しする時が来るかもしれませんし」
「そうだな。恋人には、ちゃんと話さねぇといけねぇことだしな」

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