
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
部屋に戻ると悠史は俺の言った通りちゃんとベッドで眠っていた
「待たせたな。腹は?」
「減ってない、かな……」
「これとこれどっちが食えそう?」
「お腹すいてないってば」
「……」
何も食おうとしない悠史に結構重い風邪か?と思考を巡らせながらも食べ物を差し出し続ける
「……じゃあ、ヨーグルト……」
結局粘り勝ちしたのは俺で、選ばれたヨーグルトの蓋を開けてスプーンと一緒に渡してやった
悠史がヨーグルトを食べるのを眺めていると千秋が薬とコップ1杯の水をお盆に乗せて部屋に入ってきた
「悠史さん、大丈夫ですか?」
「ご心配おかけして申し訳ないです。熱も大したことないので、大丈夫ですよ」
いつもの笑顔を見せた悠史に、俺は大したことない熱なわけあるかアホと心の中で突っ込んだ
「ほら、いいから食えよ。食ったら薬飲んで寝ろ」
「うん……仕事は……」
悠史の部屋の引き出しを漁って着替えを取り出しながら「当然休みだ」と言うと「だよね……ごめん……」と悠史が謝罪の言葉を口にする
「さっきも言ったがいちいち謝るな。おら着替え。寝る前に着替えろよ」
俺が取り出した衣服をベッドに投げると、その横で千秋が泣きそうな顔をしていた
「悠史さんごめんなさい……僕がちゃんと見ていなかったから……」
