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言葉で聞かせて

第12章 忘れられないこと


身体の向きを変えさせて部屋の方向に背中を押す
「え?わ、待って……っ」と焦った様子の悠史を無視して部屋に押し込んだ


「いいか。布団かけて寝てろよ」
「あつーー」


俺の名前を呼ぼうとした悠史を遮って扉を閉め、俺は1人でリビングに向かう

リビングに入ると千秋が笑顔で挨拶をしてくれた


「おはようございます」
「あぁ」


毎度のことだが返事になっていない俺の返事を気にすることもなく千秋は机の上に料理を並べていく


「敦史さんが悠史さんより早起きなんて珍しいですね」


と呑気なことを言って笑っている千秋の頭を撫でて


「悪いんだけど、朝飯食うのちょっと待っててくれ」


と言うと俺は滅多に入ることのない台所に足を踏み入れた


「どうかしたんですか?」
「悠史が熱出したんだ。最近溜まってた疲れのせいだろ」
「お粥とか、消化のいいもの作りましょうか?」


俺は千秋の質問に答えながら冷蔵庫と棚を漁る


「いや、あいつお粥だけ食えねぇんだよ。これと……これでいいか。あと風邪薬……」
「そうなんですか。あっ……薬は僕が持っていきます」
「サンキュ」


俺はヨーグルトとバナナを手に悠史の部屋に戻った

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