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言葉で聞かせて

第12章 忘れられないこと


廊下を歩いてリビングに戻る途中千秋が俺の裾を引っ張った


「ん?」
「あの……悠史さんの嫌いな食べ物って他に何かありますか?」
「あーー……そうだな……あんまり味がしないのが苦手なんだよ。確か」
「わかりました!」


千秋は真剣な顔で頷く

俺は少し屈んで千秋の唇に触れるだけのキスをした


「!」
「俺の飯も手抜くなよ」


顔を真っ赤にした千秋が「はい」と返事したのを見て頭の上に手を乗せる


「食料品買いに行くなら車出すけど、どうする?」
「お、お願いしますっ」
「あぁ。準備するから待っててくれ」


俺は部屋に入って服を着替え、サイフと車のキーを持って部屋を出た


髪は……
今からセットすんの面倒クセェな
後ろで結んどくか


洗面所にある鏡を見ながら女が俺のカバンに落としていったヘアゴムを使って髪を結う


うし


リビングに戻ると千秋はキッチンで必要なものを紙に書き出していた


「もう少しかかりそうか?」
「いえ、もう終わりまーー」


千秋が俺の方を振り向いて言葉を止める


「髪……似合ってますね」


そして千秋は顔を赤くしてそんなことを言った


「ははっ、さんきゅ。ほら行くぞ」

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