
言葉で聞かせて
第12章 忘れられないこと
一応部屋にいた悠史に一言声をかけてから俺たちは家を出た
車に乗り込んで千秋に行きたい店を聞いてから車を走らせる
特に気まずいだの居心地が悪いなんてことはない沈黙が暫く流れる
その沈黙を破ったのは千秋だった
「敦史さん。今日何か食べたいものありますか?」
「食べたいもの?」
「はい」
急に聞かれてもな
いっつも千秋に任せっきりだし
食いたいものねぇ
「そうだな……んー……」
俺が考え込んで黙っても、千秋は微笑みながら答えを待っている
「珍しいな。千秋がわざわざ聞いてくるなんて」
頭の中では一応食いたいものを考えながら率直な感想を言う
すると千秋は「だって……」と前置きしてから少し恥ずかしがって答えた
「だって、俺の飯も手抜くなって言ってたじゃないですか」
あぁ、さっきのやつ
別に俺の食いたいもん作れって意味じゃないんだけどな
どう勘違いしたんだ?
あれか?希望通りのもの作れば手抜いてないって言えると思ってるとか?
俺としてはむしろ考えることを放棄しているようにしか見えないけど
思わず口から笑みが溢れて、千秋に怒られる
「ちゃんと考えて下さい」
