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言葉で聞かせて

第12章 忘れられないこと


「あらそうなの」と悪びれもせずにいる姉にはもう呆れなんて感情も湧いてこない


まぁ、こんな血も涙もねぇような女にそんな感情を期待しても無駄か


「で?」
「なによ?」
「今回はどのようなご用件で?」


俺がわざと丁寧な棒読みを披露するとそれを意にも介さず姉は「千秋さんがお元気か様子を見に来たの」と言い放った


心配した?こいつが?
何をほざいているのやら


盛大なため息をつくと、博秋さんがフォローに入ってくれる


「本当に突然でごめんね。僕が気になってついでに寄ってもらったんだ。……あっ、でもね二人を信用してないからとかでは決してなくて……」


完全に尻にしかれてるんだな、という俺の考えは心の中だけにしておくとして俺はできる限り自然な笑顔を作った


「全然問題ないですよ。誰であろうと身内が心配なのは変わりないですから」


俺の言葉に安心したのか博秋さんは「ありがとう」と安心した顔をする


この感じだと目の前で呼び捨てにすんの気まずいな


「千秋さん?俺お茶淹れたら自分の部屋行くから、久しぶりに兄弟水入らずで楽しんでな」


いつも通り頭を撫でると、千秋は「はい」と笑った

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