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言葉で聞かせて

第12章 忘れられないこと


そのことに過剰なまでに反応したのは博秋さんだった


「!?!?千秋!?」
「……あ……っ」


ん?この反応
もしかして言ってなかったのか?


「千秋!?声が……!?」
「ぁ、あの……そう、なの……声、出るように……ーーっ!」


千秋が話していなかったことを思い出して慌てているのを余所に博秋さんは千秋を抱き締めた


「……っ……良かった……良かったなぁ……千秋……」
「……うん……」


兄弟愛ね
たまにはいいかもな

俺の千秋を抱き締めてんのは許せねぇけど


俺は黙ってキッチンに立ち、少量のお湯を沸かしてお茶を淹れた

博秋さんが声の戻った経緯と最近の千秋の生活を、久しぶりに聞いたであろう本人の声で聞いてるのを邪魔しないように俺はそっと机の上にコップを置いた

窓から下を見てる姉の分も一応


うちの姉もこんぐらいの家族愛発揮してくんねぇかな


それから俺は邪魔しちゃ悪いだろう、と様子見ついでに悠史の部屋へ

小さくノックすると中から「はい」と声がした


「寝てねぇのかよ」
「敦史……ふふ、賑やかで眠れなかった」
「あぁ、そういうことか。悪いな」
「うぅん」


暇つぶしに悠史と暫く話していると、扉がノックされた

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