言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
「千秋さん、食器の片付けや戸締りは僕がやっておきますから、ご自分のお部屋に戻られてもいいですよ?」
自分の部屋の方が集中できて仕事も捗るだろう、と思っての言葉だったんだけど、何故か千秋さんは頬を膨らませた
「?」
「…………迷惑、でしょうか?」
少し間を持って言われたことにぎょっとする
「迷惑だなんてそんなことないですよ。ただ集中出来るかな、と」
「それなら全く問題ないです。……僕が側にいたいだけなので」
甘え上手
そんなこと言われたら何も言えないですよ
幸せな気持ちで食事を再開して、千秋さんがキーボードを叩く音をなんとなく聞き流していると
「……」
千秋さんの手が止まった
どうしたんだろう、と目線を千秋さんに向けると千秋さんも僕を見ている
「隣に行ってもいいですか?」
ちょっと俯き気味、恥ずかしそうな顔
本当に小悪魔ですね
「どうぞ」
僕が隣の椅子を引いて手招きすると、千秋さんの顔が明るくなってパソコンと一緒にこちらに来た
カタカタとまたキーボードを叩き始めた千秋さんの手元を見ると、詰まることもなく文章を打ち込んでいる
頭の中でもう出来上がってるのかな
すごい