言葉で聞かせて
第13章 言葉で聞かせて
そしてそこにキスを何度か落として、輪郭をなぞるように舌で舐めた
「……こんな風に、手を出してしまいたくなるでしょう?」
唇が耳に当たるぐらい近くで囁けば、千秋さんの身体がぶる、と震えた
本当に、可愛らしいですね
抱きしめる腕を少し緩めると千秋さんが顔を上げる
「千秋さんの手を止めてしまってすみません。ご飯にしましょうか」
「……」
微笑んだ僕の視界で、千秋さんが急接近した
「!」
千秋さんが背伸びをしてキスをしたんだ、と気がついた頃にはもう離れてしまっていて
とんだ小悪魔さんになってしまいましたね
と高鳴る心臓を抑えることしかできなかった
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
夜食として出てきたのは当然のように僕の好物で、言わなくてもわかることに嬉くなる
僕が「いただきます」と食事に手をつけていると、千秋さんはテーブルの反対側に座って小型のパソコンを持ってきた
珍しいな
仕事かな?
「お仕事ですか?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと立て込んでしまって……」
僕たちの前で小説を書くことがなかったから、本当に立て込んでいるんだろうな