
言葉で聞かせて
第1章 姉から突然の呼び出し
すると姉さんがため息をついた
「それがそうもいかないのよ。私達だって出来ればそうしたいけど、博秋くんが転勤で九州に行かなきゃいけなくなったの。でも弟さん、小説家なんだけど、事情があって東京にいなきゃ仕事が出来なくて……」
「最近は電話もメールも発達してんだから小説ぐらいどこででも書けんだろ」
俺の言葉に姉さんは視線を鋭くして俺を睨んだ
「だから、そこに軽々と人に言えない事情があるの」
俺は心の中で舌打ちした
って言われても、どうにも出来ねえよ
俺が悠史に視線を向けると、悠史も俺を見ていた
ーーどうする?
俺は目線で悠史に伝えた
ーーどう足掻いても無駄だろ
こいつのことだ
結局俺たちが折れるしか道はねえよ
ーーそうだね
双子特有の意思疎通、なんてこの歳になっても出来るとは思わねえよな
気持ち悪いけど、便利なんだよ
「家を提供して貰えるだけでいいんだ。生存確認が出来るだけで」
博秋さんのその言葉に悠史は穏やかに返した
「わかりました。僕達で弟さん引き受けます」
悠史の言葉に博秋さんは心から安堵したような顔をした
「ありがとう。悠史君、敦史君」
「私からもありがとう」
「それで、弟さんは何時からお招きすれば良いですか?」
「あんた達の都合の良い日でいいわ」
俺達は目を見合わせた
