歌 DE 小説
第1章 秘蜜 ~黒の誓い~
1902年 イギリス
「イタタタ…」
一人の傷付いた天使が夕暮れの街を足を引きずりながら歩いていた。
「呼び笛も落としちゃったし…どうしよう…」
彼女の名前はシエル。
肩までの金色の髪に白い服が良く似合う天使だ。
「駄目…もう限界…」
しばらく歩くとシエルはその場にヘたれ込んだ。
シエルの体の所々からは血が流れ、片方の羽は折れているみたいで反対側を向いていた。
「大丈夫ですか?」
突然、声を掛けられ振り向くと蝙蝠の様な羽がついている男性がいた。
「あ…あ…」
彼は悪魔だった。
「こんな可愛い天使様が十字架も持たず、しかも傷だらけで下界にいるとは…今日は良い日だな」
シエルの体は震えていた。
上級天使であれば普通の悪魔は近づく事も出来ない、だがシエルの様な下級の天使が十字架も持たず悪魔に出くわせば格好の餌食になる。
「俺の名前はアエリアル。お前の名前は?」
「主よ、私をお助け下さい。私を狙う悪魔にどうか制裁を…ーっ!!」
シエルは服を掴まれ壁に押し付けられた。
「馬鹿か?俺を言葉だけで追い払えると思っているのか?天使や人間が俺達を追い払うには言葉の他に聖書や十字架が要るんだよ」
苦しみと恐怖で顔を歪ませるシエルにアエリアルは嘲笑する。
「安心しろ、すぐ楽になるさ」
そう言うとアエリアルはシエルの首に掴み力を入れる。
呼吸が出来ない苦しさで悶えるシエルの目にある物が映った。
シエルの目の先には教会に取り付けられた十字架が夕日の影になって浮かんでいた。
「あ゛ー!!ひゅーひゅー!!」
アエリアルに十字架を見せるために指を差し、声にならない声を出す。
「何だ…?」
シエルが指差すのに気付き、アエリアルは振り向いた。
「ぐあっ…」
十字架を目の当たりにしたアエリアルはシエルを放し自分の目を塞いだ。
「ゴホッゴホッ」
「くそぉっ…目がっ…」
開放されたシエルは十字架の影まで這いずる。
「運の良い奴め!!」
恨めしそうに叫ぶアエリアルの目を塞ぐ手からは血が流れていた。
アエリアルは痛がりながら影に消えた。
「ハァ…ハァ…」
安心したシエルは呼吸を整えた。
「キャッ!?」
「ー!?」
小さな悲鳴が聞こえて見てみると黒い出掛け用のドレスを着た少女がいた。
”人間に天使が見える筈は無い”
確かにその筈なのに少女はシエルを見つめている。
「天使…?」
「イタタタ…」
一人の傷付いた天使が夕暮れの街を足を引きずりながら歩いていた。
「呼び笛も落としちゃったし…どうしよう…」
彼女の名前はシエル。
肩までの金色の髪に白い服が良く似合う天使だ。
「駄目…もう限界…」
しばらく歩くとシエルはその場にヘたれ込んだ。
シエルの体の所々からは血が流れ、片方の羽は折れているみたいで反対側を向いていた。
「大丈夫ですか?」
突然、声を掛けられ振り向くと蝙蝠の様な羽がついている男性がいた。
「あ…あ…」
彼は悪魔だった。
「こんな可愛い天使様が十字架も持たず、しかも傷だらけで下界にいるとは…今日は良い日だな」
シエルの体は震えていた。
上級天使であれば普通の悪魔は近づく事も出来ない、だがシエルの様な下級の天使が十字架も持たず悪魔に出くわせば格好の餌食になる。
「俺の名前はアエリアル。お前の名前は?」
「主よ、私をお助け下さい。私を狙う悪魔にどうか制裁を…ーっ!!」
シエルは服を掴まれ壁に押し付けられた。
「馬鹿か?俺を言葉だけで追い払えると思っているのか?天使や人間が俺達を追い払うには言葉の他に聖書や十字架が要るんだよ」
苦しみと恐怖で顔を歪ませるシエルにアエリアルは嘲笑する。
「安心しろ、すぐ楽になるさ」
そう言うとアエリアルはシエルの首に掴み力を入れる。
呼吸が出来ない苦しさで悶えるシエルの目にある物が映った。
シエルの目の先には教会に取り付けられた十字架が夕日の影になって浮かんでいた。
「あ゛ー!!ひゅーひゅー!!」
アエリアルに十字架を見せるために指を差し、声にならない声を出す。
「何だ…?」
シエルが指差すのに気付き、アエリアルは振り向いた。
「ぐあっ…」
十字架を目の当たりにしたアエリアルはシエルを放し自分の目を塞いだ。
「ゴホッゴホッ」
「くそぉっ…目がっ…」
開放されたシエルは十字架の影まで這いずる。
「運の良い奴め!!」
恨めしそうに叫ぶアエリアルの目を塞ぐ手からは血が流れていた。
アエリアルは痛がりながら影に消えた。
「ハァ…ハァ…」
安心したシエルは呼吸を整えた。
「キャッ!?」
「ー!?」
小さな悲鳴が聞こえて見てみると黒い出掛け用のドレスを着た少女がいた。
”人間に天使が見える筈は無い”
確かにその筈なのに少女はシエルを見つめている。
「天使…?」