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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第23章 ベトナム編〜サァシャの罪〜

(1)

ベトナム


夕方の市場の通りは活気づいている

食材を買い求める主婦たち

珍しい喧騒を楽しむ旅行者たち

夜の街に繰り出そうと早い時間から出かける男たち


またその男たちを楽しませるため夜の店に出勤する女たち


中年の主婦サァシャは昼間のパートが終わり、市場でいつもの買い物を済ませ、帰路につこうとしていた


最近は自宅近くの市場ではなく、職場近くの市場に通っている


以前の勤めていた工場は連邦軍と企業連合軍との小競り合いで破壊されてしまっていた


今の職場は企業連合軍からの計らいで、使われていない古い軍の工房を間借りさせてもらい運営することになり、サァシャたちスタッフも引き続き雇用させてもらえた


通勤ルートは変わってしまい、時間もかかるようになってしまったが、サァシャは嬉しい誤算だ


というのもこの新しい職場は若い頃、学生の頃に通っていた場所で、20年ぶりに通うことになったのだ


変わっていない古い店

変わってしまった真新しいビル


感慨深い気持ちと、長い月日の変様

毎日歩くたびに何かを発見して、ひとりニンマリとしてしまう


誰にもわからない、自分だけの楽しみが通勤時間になった



そして特に思い出深い路地があった



思春期の甘酸っぱい思い出あふれる光景


日々の日常に疲れ切ってしまった主婦が、久しぶりに昔の思い出を楽しめる思い出の路地だった


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