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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第6章 ~演習~

ヴァイカート軍曹の心配は的中していた

ハイブリッド機体は凄まじい加速で飛翔しているが、中の演算処理はギリギリ間に合うぐらいのスピードしか出来ていない

モニターにアラートの表示が出ては消え、出ては消える

ナオトは集中できない上に、身体にかかるGを耐えるのに精一杯だ

これではボクが暴れ馬にしがみついてるだけだッ!


ナオトの思惑では模擬戦の敵機、黒い“ヴァルキューレ”を駆るハンズィ機の真下から奇襲攻撃をかけるつもりだったが、相手のスピードを捕捉できずにいる

低い雲を突っ切り、視認されにくい雲の中を反転し、一気に急上昇する!


「ドンピシャッ!」


“ヴァルキューレ”だ!


量産機“フリーゲン”では出せない推進力で一気に詰め寄り、応戦姿勢をとらせる前に…


「<ブリッツ>!!!!」


閃光ッ!


雷鳴ッ!


一瞬、周りは光りに包まれ、モノクロの世界になる!


放電砲が激しい轟音とともにスパークした!

あくまでシステム上の画面表現だが当事者には実戦なみの画像が映し出され、凄まじい量の模擬データが流出し、近くに浮遊している中継機が受信していく


「…やったッ!」


ナオトが歓喜の声を上げた瞬間…!



アラート!
アラート!
アラート!
アラート!

エラー!
エラー!
エラー!
エラー!


システムダウン!


「…あ!」

モニターがすべて断絶しブラックアウトしていく!

エラーを起こしたシステムはすぐさま再起動を開始していく

ナオトの機体は失速し、再びぶ厚い雲の中に吸い込まれていった!

入れ替わるように雲からヴァイカート軍曹の“フリーゲン”が飛び出してきた

1分間、ヴァイカートはナオト機を見失っていた

雲から飛び出したものの“クラング<改>”の機体は無く、うろたえた一瞬の隙を突いて、頭上から黒い“ヴァルキューレ”の放電砲が光った

「…し、しまったッ!」

ヴァイカート軍曹は“LOST”となり撃墜された

“ヴァルキューレ”はそのまま降下、“フリーゲン”も後に続いたが、失速した“クラング<改>”は現実に“LOST”してしまった…

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