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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第6章 ~演習~

結局、模擬戦は決着のつかないまま終了した

それぞれの隊長機2機が遭難した機体の索敵にあたることになり、作戦はさらに下位官に引き継がれた

が、突然の転任に対応できずそれぞれの部隊は統率が取れずてんでバラバラの空中戦になってしまった

上空で浮遊している母艦“キュールシュランク”で状況を見ていたハンセン艦長もシンシア隊長もガックリと肩を落とした

「あいつら…ッ!隊長機が変わった途端に…!」

「ん~…、シンシア曹長…いろいろ課題が出来たな…」

実戦で隊長機が撃墜されることはある

また母艦が消失する場合もある

状況に応じて素早い判断が出来ないと命とりであるし、作戦遂行も叶わない

もし実戦であれば全滅だったかもしれないのだ

怒りが頂点に達しているシンシアであったが、艦長は冷静だった

“結局は2人の隊長が突出し過ぎて、パイロットたちが育ちきれてないのだ”

訓練は中断、“フリューゲル”は全機遭難救助に向かった


が、不思議なことにどこにも機体は見つからなかった

予測された墜落コースを何度も試算されたが、どこの海上にも小さな島々にもそのような痕跡は無かった


夜間、捜索は打ち切られ全機は母艦に帰投した

シンシアは部下たちを怒鳴りつけるつもりだったが、それどころではなくなってしまった


パイロットの生還はもちろんだが、隠密作戦部隊の性質上、機体の回収やシステムデータの隠蔽は必須だ


落ち込んだパイロットたちには休息をとらせ、シンシアは火傷で痺れた両手を駆使して、苦労しながら何度も墜落コースを再計算させた


パターン1
パターン2
パターン3
パターン4


パターン20

見かねたハンズィやマリコ、アンジェラたちも深夜まで数々のパターンとデータを出力していた


無表情のシンシアだが、みな彼女に焦燥感があるのはわかっていた…

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