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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第34章 25バンチの亡霊

(1)

倉庫が立ち並ぶ密集地のなか、訓練用の〈ジム・トレーナー・セカンド〉が身を隠している


「他の友軍機は?」


シモンズ教官が尋ねる


「反応はありません」


ナオトが下段シートから応える


複座式の訓練機は天井の高いコックピットだ


教官が上部シート、訓練生が下部シートに座る


教官用の座席からは強化ガラスにより有視界行動がとれ、辺りを見渡せた


「おい、まだクチに入れるモノあるか?」


シモンズ教官は真下を向いて、自分の両脚の隙間から見えるナオトの頭に声をかける


「ガムなら、さっきのと同じやつですよ」



ナオトは腕を真上に伸ばして上部シートの上官に配給品を手渡す


2階建て方式に座席シートを配置されていて、コックピットは同じ空間で共有されている

訓練中とは言え、真下から女性を見上げるというのは気が引けるので顔は動かさず、腕だけを伸ばしている


それもシモンズ教官はパイロットスーツではなく通常講習と同じタイトスカートの訓練校の制服姿


頭のすぐ上にナマ脚があるのは精神衛生上良くない気がする……


ここはサイド1


スペースコロニー群のうちのひとつ、25バンチ


コロニー公社の元を離れ連邦軍が管理しているコロニーで、おもに模擬戦などの訓練用に残されている


新兵のトレーニング場、

新編成のフォーメーション訓練、

また新兵器の試験場でもある


その一部の区画をエピカ・ロンデニオン空間訓練校が退役軍人の復職活動を名目に借り上げている


20人いた訓練生も今では数人しか残っておらずあっという間に脱落していった…


そして今ナオトは最終訓練とも言える実機演習で数日間のサバイバル演習を実践中だった


もともと組むべきパートナーが途中欠員してしまい、現場の判断で急遽指導員であるシモンズ教官とペアになり訓練が続行されていた



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