テキストサイズ

浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第35章 秘密警察の「人狩り」

(1)

ネパールの山岳地帯


市場で買い物をしている女のコ


深くフードを被って、両手には食料をたくさん詰めた紙袋を抱えている


市場の雑踏から離れて路地を通り抜けようとすると少女は黒づくめの男たちに阻まれた



全身黒い制服に、身体の要所にプロテクター

頭からは大きなフェイスゴーグル

黒いゴーグルのため表情は見えない

そして肩からはライフルを担いでいる



「お嬢ちゃん、アンタ不法滞在者だろう?丘の上の〈修練場〉に通っているんだろう
 俺たちは連邦政府の警察機関だ
 困るんだなぁ、いつまでも地球に居座られちゃあ! ここにアンタの居場所は無いぜ」


「まぁ、待てよ! 怖がってるじゃないか
 お嬢ちゃんひとりかい? 俺たちは不法滞在者を捕えるのが仕事なんだが、俺たちだって鬼じゃない……ちょっと建物の中で話し合わないか?
 悪いようにはしないさ!
 話し次第では帰してやってもいい
 お互い人間だからな」


フードを被った少女はくるりと反転して逃げようとするが、路地の向こうにも数名の黒づくめの男たちが立っている


すでに囲まれていた
逃げ場は無い


このまま逮捕されて辺境の宇宙コロニーに移され、一生奴隷のように労働させられるか、

彼らの言うとおり“話し合い”と言う名の集団レイプを受け入れるか


どちらにしても彼らに捕らえられたが最後、なにもかもなぶられてしまうだけだ


ひとりの男が近づきフードを上げる


少女はノマ

インド・アブドゥラ解放軍所属の〈プラガーシュ〉のパイロット


「……ほぉ、インド系か! ちょうどアジア系の女には飽きてきたところなんだ
 目がパッチリしてカワイイじゃねぇか」


ノマは腕を掴まれ、紙袋から果物が落ちた



その瞬間!

ジープが路地に突っ込んできた!

「ノマ・ナッジール!」

「ソニア・ミラー!」


ジープを運転するカナダ人女性、ソニアも連邦軍のパイロットだ


二人は伸ばした腕をがっしり掴み合う


「くそ!撃て!逃がすな!」


黒づくめの男たちの銃撃も虚しくジープはあっという間に路地を駆け抜けて消えていった…



ノマとソニアはネパールに滞在していた……



ストーリーメニュー

TOPTOPへ