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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第35章 秘密警察の「人狩り」

(2)

「ダメじゃない、離れすぎちゃあ!」


「ごめんなさい、近道で戻ろうとしたのがいけなかったわね…、あんなに〈マンハンター〉が居るなんて」


ジープは荒れ果てた岩ばかりの道を駆け上がっていった


〈マンハンター〉

連邦政府直轄の秘密警察組織
不法滞在している宇宙移民者を拘束、強制送還させる恐怖の団体

正式な組織だが力を強め、暴力行為が横行していた


増えすぎた人類を宇宙に進出させて90年過ぎ…

宇宙移民は確実に増えてスペースコロニーの数はゆうに300基を超えていた
宇宙移民者〈スペースノイド〉の地球帰属は認められず、その不満は宇宙宗教が心の拠り所となっていた

〈宗教の自由〉

連邦政府は特権として宗教的理由により一時的な地球への礼拝は認めていたが、その制度を悪用した不法滞在者が続出していた


秘密警察〈マンハンター〉は不法滞在者の拘束、逮捕、強制送還を理由に一方的な暴力行為がエスカレートしている


その要因には数週間前のインド・カシミール紛争が影響していた

連邦軍が制圧出来たことにより反抗組織が弱体化、連邦政府の組織である秘密警察の力が大きくなっていったのだ

この状況になってしまったのはソニアたちにもいくつかの原因があったのだ


あのままノマ・ナッジールが拘束されていれば集団暴行、集団強姦
 そのまま野山に捨てられるか、強制送還で宇宙の辺境へまわされていただろう


ふたりは丘の上の〈修練場〉へ辿り着いた


もともとチベット仏教の一派の寺院だったものが、宇宙宗教の影響で来訪者の修行場となっている


だがヨガの健康ブームと勘違いされ、軽薄な若者たちの溜まり場になっているのが現実だ


寺院の中庭でヨガを楽しむグループも居れば、
屋内でフリーセックスを楽しむグループも居たり、寺院は混沌としていた


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