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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第38章 サイコ・クラングの逆襲

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「!……待って!クー!
 
 許して!

 置いていかないで!

 私を独りにしないで!」


クーはサイコ・クラングを起動させるとゆっくり前傾姿勢をして立ち上がる


その拍子にアースラはコックピットから投げ出され、40〜50メートルはあろうサイコ・クラングから真っ逆さまに落下し、グシャッ!と潰れた音を立てた



サイコ・クラングの周りにはハンズィやラルフたちの部隊が遠巻きに警戒しているが、手を出せずにいる


両腕を失ったサイコ・クラングは最期のエネルギーを使ってホバリングを始め、ニューホンコンの港から海の中へ進んでいく


周りはハンズィたちキュール・シュランクのフリューゲル部隊だけでなく、民間のおそらくテレビ局のヘリコプターなども海の上を進んでいくサイコ・クラングを追っていく


ニューホンコンから離れて数時間後


ゆっくりとサイコ・クラングは海の中へ沈んでいった



マニラ海溝


5000メートルもの深海の世界へサイコ・クラングは沈んでいく



おそらくは深海の水圧に耐え切れず内部へ圧縮されてしまうだろう


クーは誰の目にも触れず、誰にも邪魔をされない最後を選んだ


ここなら、誰にも利用されない


サイコ・クラングも、俺自身も…


ゆっくり沈んでいくころ、サァシャの心音は途絶えてしまっていた…


クーは死ぬ直前になって孤独となってしまうことは、己への罰だと思う



サイコ・クラングの機体は深くまで到達することもなく早めに水圧で押し潰された



人間の業により産み出されたクー

サイコ・クラングはこうしてこの世界から消えた



衛星軌道上で小惑星アクシズの落下を防いだ連邦軍だったが、地上では残酷な悲劇が人知れず行われていたのだった…

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