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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第44章 終幕〜永遠のキンバリー

(1)

地球を離れるシャトル


多段式のブースターを切り離して成層圏を抜けると、衛星軌道上に巨大な人工物が見えてくる


宇宙ステーションのターミナル


人々が集まり、そして別れていく旅の通過点


月へ向かう者、サイド1へ向かう者、みなここで降り立ち、去っていく場所


シャトルのタラップから降りる人々の列の中にふくよかな一人の女性の姿があった


キンバリー・シナジー


〈マグリッド〉でアレクと行動をともにしていた女医は喪失感のなか、新たな居場所を求めて地球圏を離れようとしていた


アレクとの別れは驚くべき事でも無く、いつか訪れるであろう出来事の一つでしかない

彼は戦士であるし、彼女は研究者であったから


一年戦争よりも昔、まだ宇宙世紀の途上期のころ

キンバリーは研究者としてアレクと初めて出会った


当時はモビルスーツなどもなく、治安維持には戦闘機や戦闘ポットが使われていた時代

軍の研究者として働いていたうら若きキンバリーは新しい試みとして〈戦士の育成〉をテーマにしたいくつかのミッションに関わっていた



精度の高いパイロット教育

短期間での育成試験

低コストでの運用

人工的な戦士の育成




それらを踏まえ、様々なバージョンが検討されては廃棄され、また新しいバージョンを試される



その一つ、反射神経に特化したパイロットの発掘に注目したプロジェクトに参加していたとき彼に出会った


まだ若い少年兵のように思われたが、彼の能力はベテランパイロットをはるかに凌駕していた


そこでキンバリーはアレクの秘密に近づいていく


実は外見よりも歳を重ねていたこと


身体的能力が思春期の瞬発力を維持していること



こうして〈エターナル計画〉はキンバリーとアレクのふたりから始まるのだった……



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