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missing☆ring【完】

第4章 3年前。

「陸!」



私も陸を呼び小走りで陸に駆け寄った。



「ご、ごめん。待った?」



息を整えながら言うと否定も肯定もせずに優しく笑い、ちょっと乱れた髪を丁寧に直してくれた。



「あ、ありがとう」


「じゃあ、こっち」


「うん」




陸はズボンのポケットに手を突っ込んで歩き出す。
駅から人出は凄くて、並んでは歩けなかった。



少し前を歩く陸に置いて行かれないように、陸の姿を見失わないように必死だった。
陸は「裕実、大丈夫?」と時々振り向いて足を止めてくれた。



「大丈夫。想像より人が多くてビックリだよ」


「今年は確かに凄いかも、去年はこんなに混んでなかったのにな。失敗したか?」


「……去年も、来たんだ」





去年の夏と言えば、陸は松村さんとまだ付き合っていた頃。
きっと松村さんと来たんだ……




胸の奥がギュッと捕まれたような感じがした。



「あぁ、典幸と来たんだよ」


「あっ、典幸と来たんだ」


「誰だと思ったんだよ」




陸が意地悪に笑う。
私の本当の気持ちを見透かして"やいてる?"って聞かれたみたいだった。


「べ、別に」



と答えた時に前から来た人とぶつかり肩が後ろに持って行かれ、うわっと転びそうになった。



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