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暗闇で恋しましょう

第11章 まだまだどうやら子供のようで

とりあえず、言葉は出さず、じっとひぃちゃんを見詰めてみる。



こんなんで言ってくれたら、苦労しないんだけどなぁ



そんな願いはもちろん虚しく散りゆく。


喋ることは愚か、ひぃちゃんは訝しげな表情をしたかと思えば、首をちょっと傾げただけ。



「っ……」



突如走った胸の痛みに、ぎゅっと自分の胸辺りで拳を握りしめる。


30代男性の首傾げ、誰に需要があるかと問われれば、私にある訳で。


不意打ち過ぎて、胸にぎゅんとダメージを受けてしまった。


ふぅと浅く息を吐き、平常を取り戻す。



こんだけ反応するのも私だけなんだろうなぁ



分かっていても、やめられない止まらない、のだ。


気を取り直し、もう少しだけ粘ってみようかと思うも



「………」

「………」



続くのは沈黙ばかり。


やはり、言ってくれる気配はない。


ここは、思い付いている魔法の言葉を放つしかないのだろうか。


言えば、必ず返ってくる言葉は


“似合ってる”


そうに違いない。


だって、思い付いている言葉は、“言わざるを得ない”状況を作る。



“似合ってる?”



ほら、ね?



こんなの言うしかなくなる。


流石のひぃちゃんでも、きっと。




………………


……



……本当に?




過ぎる疑念。

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