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暗闇で恋しましょう

第13章 情けない

でも、そう俺らに都合良く世界は回らないことを俺は知っている。


これに印を押し、机の上の整理をしてから席を立つ。


ジャケットを羽織り、部屋を出ようとしたその時、くらいだろうか。


邪魔が入るのは。


分かっていながらも、気持ちは急くためぽんと印を押すし、席も立つ。


机の上を整理し、ハンガーに掛かっているジャケットに足を運ばせる。


予想では、これを羽織るまではさせてくれたんだが



こんこん



「……」



現実は、それすらさせないと邪魔を入れてきた。


これを無視できる立場に俺は居ないのだから、困ったものだ。


だけど、どんな用件が来たとしても、杏ちゃんより優先すべきものはない。


入って来る人には悪いが、“あとにして”という準備しか出来ていない。


正直、それを言う時間も惜しい。


し、それを言うまで相手の話を聞いてる時間も惜し過ぎる。


だから、せめてもの抵抗。


“今から出ます”感はしっかり作る。



「どうぞ」



声を掛けながらも、ジャケットを羽織る。


しっかりボタンを閉め、今1度机に戻り、会社には置いておけない書類を鞄に詰める。

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