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暗闇で恋しましょう

第13章 情けない

その眼差しは、さっきと同じ。


俺に何かを訴えている。



「……杏ちゃん…?どうしたの?」



俺の問いかけ。


杏ちゃんに答える気配はない。


それどころか、杏ちゃんの手は俺のネクタイに伸び、外し始める。



「!」



俺はそれを慌てて止めて、杏ちゃんと目を合わせる。



「ねぇ、ちょっと、待って。俺、杏ちゃん泣いてるって言われて」

「……見れば、分かるでしょ?泣いてない、ことなんて」

「いや、そうなんだけど。違くて。俺、杏ちゃんの話を」

「ねぇ、水上さん」



杏ちゃんの指が、俺の喉仏をなぞり、上に上がる。


下顎、顎、下唇、上唇。


なぞり、吐く、言葉。





「私を、抱いて……?」





突拍子もない、そんな言葉。

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