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暗闇で恋しましょう

第2章 唯一の




『杏.....今まで黙っててごめん.....実は....』



って?!



きゃーっとばたばた足を動かし、都合のいい空想に浸る。


そんな事を言われた日には、私はきっと死ぬのでしょう。



「おーい。戻ってこーい」



そんな呼び掛けにハッとし、顔を上げれば頬杖ついて呆れたように私を見る水上さんと目が合った。


そうだ。水上さんがいたんだった。


すっかり我を忘れていた。


口元を覆っていた手を、膝に置き、へへと照れ笑い。



「本当、飽きないねぇ」

「飽きるとか飽きないとかないよ!だってもう何年だと思ってるの?もうかれこれおおよそ10年」






「私はひぃちゃんに恋してる」






ほうと息を吐き、ひぃちゃんの顔を思い浮かべる。


今日は今日とて、思い浮かぶひぃちゃんは無愛想だ。



「.....そっかぁ。もう10年か....大きくなる訳だ」



昔を回顧しているのか目を瞑る水上さん。


水上祥人(みかみあきと)さん。


唯一、この部屋に入れて、私とひぃちゃんの関係を知っていて、私の恋心を知る人だ。


あれだけアタックしているにも関わらず、私の恋心に気付かないひぃちゃんっていうのも、どないやねんって話ですけどね....

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