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暗闇で恋しましょう

第16章 回顧①

ははと苦笑も口から漏れるってもんだ。



「………俺は加害者で、杏は被害者」



言い聞かせるように口に出す。


“杏は俺が好き”


そのことに気付いてからだって、それを忘れた事は無い。


“許される”


そんな自惚れだって、したことない。



ない……筈だったんだけどな



俺は、杏のあの姿に酷く困惑したんだ。


それは、俺自身、ないと思ってたことをしてた証拠で。


………いや、本心を言うと、ばっちり安心してたんだ。


ないと言い聞かせることで、自分はしっかりしてると思いたかっただけ。


杏が俺を好きと分かったあの時点で、あいつの中には、もう俺が犯罪者だって意識はないんだと……



「……はは………んなわけねぇのにな」



手に持つ煙草を1吸いし、煙を吐く。



あー、本当、もう一回きちんと意識し直さなきゃいけねぇな



あの日から俺は犯罪者になったんだから。

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