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暗闇で恋しましょう

第16章 回顧①

悪かった空気が、一気に浄化されていくのを感じる。



換気って大切なんだな



そんな当たり前の事を思っていれば、近付く足音。


俺に到達する前に、ぼそりと声が呟かれた。



「………今日こそは、って思ったのに」



俺は敢えて、聞こえていない体を装う。


そればかりか


何を言っても聞かない


そんな意思を示したいのか。


体は、三角座りをし、頭を腹と腿の間に出来た隙間に埋めた。



「それなのに………開けないどころか、電話にも出ないって」



ふっと俺に影ができたことで、祥人がすぐそこにいるのだと理解する。


だからといって、顔は上げず。


声も上げず。


俺は、息を潜め、帰ってくれとオーラだけ絞り出す。

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