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暗闇で恋しましょう

第17章 回顧②

慌てて口を手で覆う。



俺は今、一体何を口走ろうと……?



ぞっと背筋を通るもの。



なんで………

名前を、たった、たった、一文字

言い切ってさえ、いないのに……



それだけなのに、あの時確かに眠らせた記憶は、簡単に溢れようとしやがる。



勘弁、してくれよ……



くしゃっと前髪を乱暴に掴み、歯を鳴らした時。


ふと、頬に何かが当たる。


反射。


払えば、舞ったのはハンカチで。


驚いた顔の、少女と目が合った。



「…………」

「…………」



…………少女?



頭が一気に冷め、そのお陰かその疑問はすぐに解決へと歩み始める。



あいつがいた、と思ったが、実際いたのはこの少女→
頬に何かが当たった→
それはハンカチだった→
少女、びっくり→
舞ったのは、この少女の、ハンカチ……?→
つまり、俺は、少女の手を叩いた……?




……………泣かれる?!



辿り着いて、弁解しようとするも、既にそこに少女はおらず。

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