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暗闇で恋しましょう

第30章 俺とあいつとそしてーー……③

足は勿論、1歩も出る気配はなくて。


だって、亡くなった彼女の遺品整理って、地獄でしかなくないか?


しかも、あの事実を知ってしまった自分だ。


俺が彼女の私物に触れていいわけないだろ?


そんな俺の思いなど容易く無視されるもので。


守の母親が、ひょっこり玄関から顔を出した。



「あぁ、良かった。来てくれたのね。飛翠くん」

「…………」



にこりと笑ってくれるけど、それに返すことは俺にはできなくて。


それに対して申し訳ないという気持ちすら、湧かなかった。


クズだろ?


でも、むしろこのまま、常識のない大人だと嫌ってくれた方が楽だと、本気で思ってたんだ。



「…………寒いでしょう?中、入って」














一緒に遺品整理なんて名ばかりだった。


守の物だと思うだけで、俺は手も足も出なくて。

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