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暗闇で恋しましょう

第33章 だから、きっと、この涙は

そんな私のことは、さして気にならないらしいひぃちゃんは、ぽつりぽつりと言葉を紡ぎ始めた。



「俺さ、有り得なかったんだよ。遊園地なんて。見るのも、行くなんて尚更。それで観覧車なんて思った挙句にゃ吐き気を催した」





「それでも………それでも、お前とならって思って」









「それで、行くなら、観覧車に乗らなきゃってぼんやり思ってんだよ。多分だけど、俺の視線、幾度もここに注がれてたんじゃね?」



視線も向けられていないけど、応えるように頷く。


目の端で私の素振りが見えているのだろう。


ひぃちゃんはやっぱり、と苦笑した。



「乗ったら乗ったで、あんなに怖がってたのに、こんなもんかって、気持ち軽くて。景色綺麗だな、なんて思う余裕もあったんだ」


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