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暗闇で恋しましょう

第5章 眠れぬ夜は

ごつごつしてて大きい手の動きにじーっと見蕩れ、はっと思い出す。



何普通に会話して、見惚れてんの!



ひぃちゃんに不満があって、無視を決め込んでいたのを一瞬忘れていた。


再度、気持ちを切り替えようとした時。


小さく小さく聞こえた言葉。



「ごめん」



耳を疑う。


それは、堪らず声に出る。


「え?」

「だから、その寝れねーの。多分、つーか、絶対俺のせいだろ。なんだ、その...大人気無かった、と思う....」



意外過ぎる言葉の連続に頭はパニック。


というか、よく考えれば、いや、考えなくてもひぃちゃんが謝ることはないのだ。


だって、あんな夢を見て、あんな空気にしたのは私だし。


その空気に充てられた神経のまま、夜を迎え寝れないのも自分の勝手だ。


分かっている、分かっているけれど、内から沸く幸福感がその事実を霞める。



「き、聞こえなかった!もう1回!!」

「ジジババ抜き、七並べ、スピード、豚のしっぽ」

「ねぇってば!」



だって、ひぃちゃんはそれを分かっている筈なんだ。


なのに、謝ったということは少なくとも私に罪悪感が湧いた証拠。


私を可哀想と慈しむ心が生まれた証拠。



それってば、嬉し過ぎる!



きゃーと口元に手を置き、足をばたばた。


喜びを前身で表す私など置いて、トランプを分け始めるひぃちゃん。

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