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暗闇で恋しましょう

第37章 幸せな話

そんな顔見せられたら、さっき、収めたばかりの獣が顔を出すだろう



ちゅっ



が………………



「………奪っちゃった」



杏は悪戯っ子よろしく楽しそうに笑った。



くっそ…………色々我慢してるこっちの身にもなれっつーの……



「ひぃちゃん………?」



追い打ちをかけるように不安そうな杏が俺の瞳に映り込む。


それでも必死に獣を押さえ込み、落ち着いた大人を演じる。



「………まだ身体、だるいだろ。もう少し寝たらいい。出るちょっと前に起こす」

「ん…………」



肯定の返事をいただけたものの、俺を見詰める微睡む瞳はどうにも閉じようとせず。


何となく何を意図しているか分かった俺は、髪を撫ぜていた手で優しく頭をぽんぽんと2回叩く。

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